Q. 先日父が亡くなりました。相続人は母と妹、そして私の3人であるため、相続税における基礎控除額が4,800万円になると聞きました。相続財産は現預貯金と自宅の土地建物だけなのですが、これらの評価額の合計が4,800万円以下であれば相続税の申告をしなくてもいいのでしょうか?

A. 相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」ですので、今回の場合は4,800万円が相続税の基礎控除額となり、相続財産の総額が4,800万円以下であるならば相続税の申告は必要ありません。

解説

相続税の申告が必要かどうかは、原則としてお父様がお亡くなりになった日時点(以下「相続開始時点」といいます)の相続税評価額で判断することになります。

現金・預貯金について

 まず、現金は相続開始時点におけるお父様の保有する現金すべての合計額です。お父様の財布の中に残っていた現金やタンス預金として保管してあった現金も含まれます。預貯金も同様に相続開始時点のお父様の口座の残高全てが対象となりますし、ご家族名義の口座にお父様の財産を入れていただけの預貯金も名義預貯金として相続財産に含まれます。 

建物・土地について

自宅の建物については、市が発行する固定資産税の課税明細書に記載されている固定資産税評価額をそのまま使いますが、土地については複雑な計算が必要になるものも少なくありません。そのため、相続税の申告の要否を判断する概算額を簡易的に算出する手段として「土地の固定資産税評価額×1.1」で計算する方法も考えられます。

その他

 今回は関係ありませんが、お父様の保有していた有価証券や自動車、高価な貴金属や書画骨董品などのコレクションがあればこれらも相続税評価をし、相続財産として加算する必要がありますし、お父様の死亡保険金を生命保険会社などから受け取った場合の保険金も加算対象です。

  保険の場合は、お父様が保険料を支払い、相続人が被保険者となっている契約の生命保険なども相続財産として加算します。また、働いていた会社から相続開始後に給料や死亡退職金などが支払われるのであればこれらの財産も加算が必要ですが、死亡保険金や死亡退職金については「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がありますので、全額が相続税の対象となるわけではありません。一方で、葬式費用やお父様の借入金や未払金を引き継がなければならない場合は、その額を相続財産の総額から控除することができます。

その他の注意点として、生前にお父様から贈与を受けていた場合、相続開始時点から遡って3年間(令和9年以降の相続からは段階的に伸長され7年間)の贈与財産は相続財産に加算され、相続時精算課税制度を利用して贈与を行った場合は、その贈与財産は相続時精算課税制度選択年まで遡って相続財産に加算する必要があります。

上記の記載の評価方法はあくまでも簡易的な概算計算であり、実際の相続税申告では複雑な計算が必要となりますので、基礎控除額に達するかどうか微妙なときは税理士に相談されることを強くおすすめいたします。

詳しいことは、税務の専門家である税理士にご相談ください。(近畿税理士会 姫路支部)