Q 介護費用は、医療費控除の対象となりますか?

介護サービスは、多種多様であり、同じようなサービスを受けても医療費控除の対象となる場合、ならない場合があります。

【解説】

医療費控除は、確定申告時の相談で非常に多い質問です。

まず医療費控除の概要について簡単に説明します。

医療費控除は、その年(暦年)に支払った医療費が一定の金額を超える場合に、その超えた部分を所得から控除して税金を計算する制度です。従来は領収書が必要で、相談窓口では、「『医療費のお知らせ』ではだめです。領収書が必要です。」と言っていたのですが、平成29年分の申告からは領収書がなくても明細書を添付すればいいので、『医療費のお知らせ』を元に作った明細書でも控除を受けることが出来ます。ただ、平成31年分の申告までは、明細書を添付せず従来のように領収書の添付又は提示により医療費控除を受けることができます。

医療費控除の対象となる金額は、高額療養費、出産一時金、保険金などで填補された部分を除く実際の負担額です。また一定の金額とは、総所得金額等の5%(上限10万円)です。

年間の総所得金額等が200万円以上であれば10万円となるため10万円と覚えている方も多いのですが、年間の総所得金額等が200万円未満である場合には、医療費控除の対象となる金額が10万円未満でも医療費控除の対象となる場合があります。ただし所得税を納めていない場合は、所得税の還付はありません。

対象となる医療費の範囲については、通院費も含まれるとか、美容整形やサプリは含まれないとか、大体のことは常識的に判断できると思います。しかし、介護費用については、医療費控除の対象になるものとならないものがあり区別が難しいところです。介護は大きく医療系と福祉系に分けることができ、そのうち医療系は医療費控除の対象となり、福祉系は対象とならないのが原則的な取扱いです。しかし、現実の介護サービスは多様かつ複合的であり、その区別は、簡単なものではありません。

医療費控除の対象となるのは、介護保険制度の下で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額とされています。

まず施設サービスでは、特別養護老人ホームでの施設サービスの対価の2分の1、介護老人保健施設・療養病床等、介護医療院では施設サービスの対価の全額(いずれも、日常生活費や特別なサービス費用を除く)が医療費控除の対象とされています。介護医療院は、あまりなじみのないものだと思いますが、平成30年4月から開始された制度で、療養病床に代わる施設として期待されているものです。

居宅サービスについては、訪問看護や通所リハビリテーション(医療機関でのデイサービス)、医師等による居宅療養管理指導などは、医療費控除の対象となります。また、訪問介護や通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)などは、医療費控除の対象となる居宅サービス等と併せて利用する場合のみ医療費控除の対象となります。

これに対して、生活援助中心型の訪問介護、認知症高齢者グループホーム、有料老人ホーム、生活援助中心の複合サービスなどは、医療費控除の対象とはなりません。大体の感じとしては、医療に関するもの、医療とともに提供されるものは対象となり、生活援助中心のものは対象とはならないようです。

ただ実際には利用者自身が判断することは難しく、領収証の記載に従い、疑問があればケアマネージャーに確認することが現実的な対応でしょう。

詳しいことは税務の専門家である税理士にご相談ください。