Q.私は現在70歳です。私には20歳になる孫がいるのですが、自身の相続税の節税も兼ねて、毎年現金を110万円ずつ贈与していこうと思っています。ただ無駄遣いをして欲しくないので、孫に内緒で孫名義の口座を私が作成し、毎年110万円ずつ振り込んでいこうと思うのですが、何か問題があるでしょうか?
A.上記の方法では贈与自体が成立していません。よって将来相談者様がお亡くなりになり、相続税の申告をされる際、贈与した預金はすべて相続財産に足し戻して申告する必要があります。
解説
相続税の節税を目的として、現預金の贈与をされる方は多くいらっしゃいます。ただし贈与にはいくつか税務上のポイントがあり、それらを押さえておかないと、相続税の税務調査で過去の贈与を否認され、相続税の追徴課税をされることがあるので注意が必要です。
現預金を生前贈与する場合、ポイントは以下のとおりです。
①民法上の贈与が成立していること
②贈与契約書を作成し、贈与者、受贈者が署名すること
③贈与された預金口座の管理を、受贈者自身が行うこと
今回の事例でいいますと、最大の問題点は①の贈与がそもそも成立していないという点です。贈与とは贈与する側の「あげます」という意思と、贈与を受ける側の「もらいます」という意思の合致により成立します。よって贈与を受ける側が財産をもらったことを知らない時点でそもそも贈与が成立していません。よって贈与した現預金は、法律上はまだ贈与者の財産ということになり、相続が発生した際には相続財産に含める必要があります。ご相談にあるように贈与することを伝えると無駄遣いをするのではないか?と心配になる気持ちはわかりますが、そこはまた別途対策を考える必要があるということになります。
次に②ですが、贈与契約書の作成自体は贈与成立のための要件ではありません。実際口頭での贈与も民法上は有効です。ただし①にある、そもそも贈与が成立していたのかどうかを証明するために、贈与契約書は有効な証拠になります。ポイントは贈与者、受贈者の両者が署名するという点です。これにより確実に両者が贈与の事実を認識していたことの証明になるからです。
最後に③ですが、預金口座の管理とは、預金通帳、印鑑、キャッシュカードの管理を受贈者自身が行うということです。税務上は実質的に贈与が成立しているのかどうかという点も重要となります。贈与契約書を作成する等、形式的には贈与が成立していたとしても、通帳や印鑑、キャッシュカード等の管理を贈与者側が行っていると、実質的に贈与は成立していないと見なされてしまう可能性があります。名実ともに受贈者が自由に使える状態にしておくことが重要です。
詳しいことは税務の専門家である税理士にご相談ください。