Q. 連結納税制度という言葉を聞きましたがどのような制度でしょうか?

A. 連結納税制度とは、従来、会社ごとに個別に計算していた法人税(単体納税)を、企業グループ(親会社と子会社)を1つの会社とみなして計算する制度です。

連結納税制度の目的と範囲

企業グループを1つの会社とみなして法人税を計算する制度で、企業グループの税負担能力を測定し、適正、公平な課税を実現することを目的としています。連結する範囲は100%子会社に限られます。

連結納税制度のメリット

①企業グループ内の黒字会社と赤字会社の損益が通算されるため、グループ全体での節税効果が期待できます。

たとえば、親会社が1000万円の黒字で子会社が1000万円の赤字の場合、単体納税だと子会社の法人税は0円ですが、親会社は232万円(税率23.2%で計算)の法人税を納付しなければなりません。

しかし、連結納税だと親会社の黒字と子会社の赤字が相殺されるので、所得は0円(1000万円-1000万円)となり当期の法人税額は企業グループ全体で0円となります。(232万円の節税効果)

②研究開発減税を利用する場合、連結納税だと試験研究費の税額控除限度額はグループ全体で計算します。そのため、税額控除枠が広がり、1社では使い切れない試験研究費税額控除額を他の会社で利用することにより、グループ全体での節税効果が期待できます。たとえば、親会社の法人税が1000万円で子会社の法人税も1000万円の場合、単体納税の場合の試験研究費税額控除限度額は250万円(法人税額の25%を限度として計算)ですが、連結納税の場合の試験研究費税額控除限度額は500万円(親会社と子会社の法人税を合算した2000万円に25%を乗じる)になります。

③事業部門を独立させて子会社化する場合、連結納税だと所得が通算されるため、子会社化しない場合と比べて法人税額が変わりませんので組織再編が行いやすくなります。

連結納税制度のデメリット

①親会社が大法人(資本金1億円超)で子会社が中小企業(資本金1億円以下)の場合、単体納税の場合に子会社が受けられる中小企業向けの優遇制度(交際費の定額控除限度額など)が受けられなくなることがあります。

②単体納税と比較して制度が複雑なため、事務負担が増えます。

③連結納税制度を適用すると、租税回避行為を防止するために取りやめることはできません。

 

なお、2022年4月より、連結納税制度はグループ通算制度に移行します。グループ通算制度は、グループ内の損益通算等の基本的な枠組みを維持したうえで、制度を簡素化し、事務負担の軽減を図りつつ、親会社の欠損金利用制限措置を設けて公平な税負担措置を講じた内容となっています。

詳しいことは税務の専門家である税理士にご相談ください。