Q.金融機関からの融資において納税証明書の提出を求められることがあります。これにはどのような意味があるのでしょうか?

A.納税証明書の利用目的は様々ですが、一つは滞納した税金の有無を確認していると思われます。これは、万が一融資の返済が滞った場合に、滞納した税金の有無により返済を受けられるかどうかが変わってくるためです。

解説

1. 滞納とは

所得税の場合、12月31日を1年間の締日とし、翌年の3月15日までに確定申告書を提出します。納税額がある場合は、納期限である3月15日までに納付する必要があります。もし1日でも納期限を過ぎると、滞納ということになります。

2. 滞納した税金の優先順位は?

滞納した税金は、金融機関の融資等に優先して徴収できることになっており、あらゆる債権の中で最も優先順位が高くなっています。
ただし、例外があります。そのケースはいくつか法律で定めらており、それに該当すると滞納した税金は他の債権等と譲り合うことになります。

3. 優先順位が下がるケース ~滞納した税金vs抵当権~

金融機関は融資をおこなうときに、担保として不動産に抵当権を設定することが多いと思います。融資の返済が滞った場合にはこの抵当権を行使することで不動産を売却し、その売却代金から融資を回収します。

この時、以下のように滞納した税金がある場合、売却代金について滞納した税金と金融機関の優先順位は次のとおりとなります。

(1) 抵当権を設定する前に債務者が税金を滞納していた場合
その売却代金はまず滞納した税金に充てられ、残額が金融機関の融資に充てられます。

(2) 抵当権を設定した以後に債務者が税金を滞納した場合
金融機関はその滞納を予測することはできませんので、その売却代金はまず金融機関の融資に充てられ、残額が滞納した税金に充てられます。

4. だから納税証明書が必要

金融機関は、融資の際に納税証明書の提出を求め融資の審査資料としています。納税証明書には税金を滞納している場合その情報が記載されます。これにより抵当権を設定する前に滞納した税金の有無を把握できます。

滞納した税金がなければ、貸し出したお金より優先されるものがありませんので、安心して融資をおこなえるでしょう。逆に、滞納した税金があれば貸し出したお金より税金が優先されることがわかり、万が一のときを考えると躊躇するかもしれません。また、そのような状態では返済を確実にしてくれるかどうかも不安になるでしょう。

税金の滞納を放置していると上記のほかにもデメリットがあります。くれぐれも期限までに忘れず納付しましょう。

※今回は所得税を例に一般的な融資の際の納税証明の必要性の一例を記しましたが、税金の種類によって、または滞納となるタイミングや状況により納税証明の必要性や優先順位の考え方等は変わりますのでご注意ください。

詳しいことは税務の専門家である税理士にご相談ください。