Q この度、30年連れ添った妻と離婚することになりました。財産のほとんどを、専業主婦である妻に渡し、家を出ていこうと考えています。夫婦で築いた財産を分けるにあたって税金の心配はあるでしょうか。

A 財産をもらう側、財産を渡す側によってそれぞれ税金がかかる可能性があります。また渡す財産の種類によっては、思わぬ税金を支払わなければならないこともあります。

 

【解説】

財産分与とは、離婚した当事者の一方が他方に対して財産を分与することをいいます。分与については、金銭で支払ってもよく、また不動産を分与するなどの現物での支払いでもよいとされています。

(1)財産をもらう側の税金について

財産をもらう側の税金としては、贈与税、不動産取得税、登録免許税が考えら れます。
離婚により相手側から財産をもらった場合、通常、贈与税がかかることはありません。これは、相手側から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたと考えるからです。ただし、分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額や、その他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合は、その多過ぎる部分に贈与税がかかります。また、離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合も、離婚によってもらった財産すべてに贈与税がかかります。その他、離婚前に財産をもらう場合にも、基礎控除や一定の要件に当てはまると配偶者控除等がありますが、贈与税が課税される可能性があります。
財産分与が不動産でされた場合、不動産取得税が問題となります。不動産取得税とは、不動産を取得した際、その不動産を取得した人が支払う税金です。原則的には、課税されますが、清算的財産分与であることなど一定の場合には、減免されることもあります。
また、不動産の登記を移す際の登録免許税は、固定資産評価額の1,000分の20の税金がかかります。

(2)財産を渡す側の税金

財産を渡す側の税金としては、土地や建物などを分与した場合にかかる所得税 等が考えられます。
財産分与が現預金で行われたときは、所得税等の税金はかかりません。財産分 与が土地や建物などで行われたときは、売却したものとみなされ、分与した人に譲渡所得の課税が行われることになります。この場合、分与した時の土地や建物などの時価が譲渡所得の収入金額となります。
一般的な夫婦の場合、居住用の土地建物を分与する事が多いですが、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除などがあるので、大きな問題にはならないようです。ただし、このような特例には夫婦間(すなわち離婚前)の譲渡には適用されないといった要件もありますので、よく適用要件を確認する必要があります。
また、婚姻中に居宅以外の土地・建物・動産等を購入し、その価値が購入価額 を上回るようなものを財産分与する場合は、上記の様な特別控除が無いため、渡す側が税負担をすることになりますので注意が必要です。

(3)離婚における税金について

日本における典型的な夫婦の財産は、現金などの金融資産や住んでいる家、車などであるため、財産分与に関係する上記で解説した税金問題には、当てはまりにくいことが多いようです。ただし、分与する財産の種類や渡す時期によっては、思わぬ税金が発生する可能性もあります。

詳しいことは、税務の専門家である税理士にご相談ください。