Q. 商工会議所報6月号で電子帳簿保存法の改正が紹介されました。電子帳簿保存法の中でよく出てくるタイムスタンプについて教えてください。
A. タイムスタンプは、電子化された文書の「いつ」と「なに」をあきらかにし、その文書が原本であることを証明する技術です。電子化された文書にスタンプを付与すると、その付与された時刻にその書類が存在していたことと、付与時刻以降はその書類が変更されていないことを証明することができます。
電子文書は、検索が容易、遠隔地にもすぐ転送ができる、保管場所をとらないなど多くの利便性があります。その反面、紙文書と比較して、改ざんが容易、改ざん跡が残らず改ざんを事後に検出することが困難、記録媒体の経年劣化による内容消失の可能性などの脆弱性を持っています。タイムスタンプは、第三者機関である時刻認証業務認定事業者が発行するため書類の有無を隠すことができません。
解説
電子帳簿保存法で認められている保存方法には、3つの方法があります。
①電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係(区分1)
国税関係帳簿書類のうち電子計算機を使用して作成している国税関係帳簿書類については、一定の要件の下で電磁的記録等による保存等が認められます。
②スキャナ保存関係(区分2)
取引の相手先から受け取った請求書等及び自己が作成したこれらの写し等の国税関係書類について、一定の要件の下で、書面による保存に代えて、スキャン文書による保存が認められる制度です。
③電子取引関係(区分3)
所得税及び法人税の保存義務者が取引情報を電磁的方式により授受する取引(電子取引)を行った場合には、その取引情報を電磁的記録により保存しなければならないという制度です。
上記3方法のうち、タイムスタンプが関係するのは②スキャナ保存と③電子取引です。
令和4年1月1日施行の改正電子帳簿保存法により、タイムスタンプに関して大きな変更がありました。
②スキャナ保存、③電子取引に関してタイムスタンプを付す場合、施行日以後に行うスキャナ保存又は電子取引について、取引情報の授受後から最長約2か月と概ね7営業日以内にタイムスタンプを付すよう緩和されました。
しかしながら、必ずしもタイムスタンプが必要となるわけではありません。改正法施行前でも、③電子取引では、記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムであれば取引情報の授受及び保存を行うことが認められていましたが、同改正により、②スキャナ保存関係についても、電磁的記録について訂正又は削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認することができるクラウド等(訂正又は削除を行うことができないクラウド等も含まれます。)において、定められた入力期間内にその電磁的記録の保存を行ったことを確認することができるときは、タイムスタンプの付与に代えることができることとされました。
以上を踏まえて、②スキャナ保存や③電子取引を行う場合には、タイムスタンプを付すのか、付さない方法を採るのか、検討する必要があります。
タイムスタンプは、一般財団法人日本データ通信協会が定める基準を満たすものとして認定された時刻認証業務認定事業者(TSA:Time-Stamping Authority)のみが発行できることとされています。
詳しいことは、税務の専門家である税理士にご相談ください。