Q.令和元年度の税制改正で仮想通貨(暗号資産)の税制が整備されたそうですが、どのように整備されたのですか?

A.以下の2点が整備されました。
(1)仮想通貨(暗号資産)に関する所得税の評価方法の明確化
(2)仮想通貨(暗号資産)に関する法人税の課税関係の取り扱いの明確化

解説

まず初めに、2019年5月31日に参議院本会議で可決・成立した改正資金決済法により、2020年4月から仮想通貨の呼称が、暗号資産に変更されます。なお、以下の解説では、聞き慣れた呼称である「仮想通貨」で説明します。

(1)仮想通貨に関する所得税の評価方法の明確化

個人が仮想通貨を売却した場合の損益は、原則として雑所得に分類されます。ただし、個人事業主が事業用資産として仮想通貨を決済手段等として使用している場合については、事業所得となります。また、仮想通貨の一単位当たり譲渡原価の算出方法は、移動平均法又は総平均法です。納税者はいずれかの方法を選択することとなり、仮装通貨を取得した日の属する年の確定申告期限までに、納税地の所轄税務署長に届け出なければなりません。なお、算出方法を届け出なかった場合の法定の算出方法は、総平均法となります。

(2)仮想通貨に関する法人税の課税関係の取り扱いの明確化

法人税法上の取扱いについても今回の改正において明確化されています。

①譲渡損益の認識時点

法人が仮想通貨の譲渡をした場合の譲渡損益は、原則として契約をした日の事業年度の益金の額又は損金の額に算入されることになります。また、所得税と同じく仮想通貨の一単位当たり譲渡原価の算出方法は、移動平均法又は総平均法です。いずれを選択するか納税地の所轄税務署長に届け出なければなりません。ただし、算出方法を届け出なかった場合の法定の算出方法は、移動平均法とされています。所得税とは法定算出方法が異なりますので、ご留意ください。

②事業年度末に保有する仮想通貨の時価評価及び損益

法人が事業年度末に有する仮装通貨の評価額については、活発な市場が存在する仮想通貨の場合は、時価により評価した金額とし、その評価益又は評価損をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入することになります。活発な市場が存在しない仮想通貨の場合は、評価益又は評価損はその事業年度の益金の額又は損金の額には算入しません。

③未決済の仮想通貨信用取引の処理

法人が事業年度末に有する仮想通貨の信用取引等について、期末に決済されていないものがある場合は、みなし決済損益額を計上する必要があります。

なお、上記改正の適用開始時期は2019年4月1日以後に終了する事業年度からとなりますのでご留意ください。ただし2019年4月1日前に開始し、同日以後に終了する事業年度については上記②、③の処理を行わないことができる経過措置が設けられています。

詳しいことは税務の専門家である税理士にご相談ください。