Q この度、私の父が亡くなり、私と妹2人が父の遺産を相続することになりました。母は既に亡くなっています。父は亡くなる5年ほど前から寝たきりになってしまい、私は仕事があり、妹たちも結婚して遠方であるため、父のことは私の妻が付きっきりで世話をしておりました。

今回、父の相続にあたり、私の妻は養子縁組をしておらず、相続人ではないので、父の遺産を相続することは出来ませんが、父の療養看護をしていたので「特別の寄与」をした者として相続人に対して金銭の請求が出来ると聞き、相続人である私と妹たちに対して弁護士を通じて請求してもらいました。

しかし妹たちはこの請求に納得がいかないようなので、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することとしました。私の妻の相続税の申告はどのようになるでしょうか。

A あなたの奥様は、民法第1050条第1項に規定する「特別寄与者」に該当するものと認められる可能性があります。認められた場合、お父様の相続財産から受け取った特別寄与料は、被相続人から遺贈により相続財産を取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります

解説

平成30年の民法改正により、相続に関して相続人以外の者の被相続人に対する貢献が考慮されることとなり、「特別の寄与」が認められることとなりました(民法第1050条第1項)。*1

この「特別の寄与」が認められるのは、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合であり、特別寄与者として対象となるのは、被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者、相続人の欠格事由(民法891条の規定)に該当する者及び廃除によってその相続権を失った者を除きます)に限られています。

特別寄与料を請求する手続きには、①協議による場合と➁家庭裁判所による処分(調停又は審判)を行う場合があります。

まず、特別寄与者は、相続人に対して、その寄与に応じた額の金銭(特別寄与料という)の支払を請求することが出来ることとされています(民法第1050条第1項)。

この特別寄与料の支払いについて、相続人と協議が調わない場合、特別寄与者は家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することが出来ることとされており(同法第1050条第2項)、この場合、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定めることとされています(同法第1050条第3項)。

なお、この家庭裁判所への請求は、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った日から6か月、または相続開始の時から1年を経過するまでの間に行う必要があります。


今回のケースでは、相続人である妹さんたちとの協議が調わないようなので、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することになります。

家庭裁判所による処分により奥様に特別寄与料の支払いが確定した場合は、特別寄与者である奥様が、その特別寄与料に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなされ相続税が課税されることとなります。

具体的には、特別寄与料の支払いが確定したことを知った日の翌日から10か月以内に、納税地の所轄税務署長に相続税の申告書を提出する必要があります。

また、特別寄与料を支払うことになった相続人が、既に相続税の申告書を提出していた場合で、この特別寄与料の支払いにより相続税の額が過大となった場合には、特別寄与料の額が確定したことを知った日の翌日から4か月以内に、納税地の所轄税務署長に対して、更正の請求書を提出することができます。

*1 平成30年の改正前は相続人に対してのみ「特別の寄与」が認められていました。

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