Q.会社を経営していますが、高齢になったことと、息子が別の仕事をしているため、事業を他人に譲ろうと考えています。お金をもらうと税金はどうなるのでしょうか?

A.親族以外の第三者に事業を譲る方法としては、株式譲渡と事業譲渡が考えられます。株式譲渡の場合は、株主である個人に対して、株式の譲渡益について約20%の税金がかかります。また、事業譲渡の場合は、会社に対して、資産の譲渡益について約30%の税金と、譲渡する資産によっては消費税がかかります。

解説

1.M&Aについて

第三者への株式譲渡や事業譲渡は、総じてM&Aと呼ばれています。M&Aは事業承継の方法のひとつで、他にも、親族内承継や従業員承継があります。近年、中小企業においてはM&Aの件数が増加しています。その背景には、2018年に帝国データバンクで調査された結果に、全国の企業の後継者不在率が66.4%(兵庫県では63.7%)であったことがあります。また、中小企業庁によれば、2025年には70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の 127万(日本企業全体の1/3)が後継者未定であるとしています。

2.株式譲渡について

株式譲渡では、会社の株主が、買手に株式を売却し、売却代金を取得します。その売却代金を受け取った株主が、税金を支払うことになります。その株主が個人であれば、株式を売却したことによる譲渡益(譲渡所得といいます)に対して所得税などが課されます。譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡のためにかかった費用を差し引いて計算します。取得費は、株式を取得するために会社に払い込んだ金額などをいいます。譲渡のためにかかった費用は、M&Aのためにアドバイスや仲介を受けた手数料等があたります。譲渡所得を計算したら、税率を掛けて税額を算出します。税率は、所得税が15.315%、住民税が5%で、合計20.315%になります。また、株式の譲渡は、申告分離課税といって、給与所得や事業所得等とは区分して計算することとなり、他の所得と損益通算することはできません。

3.事業譲渡について

事業譲渡では、売手の会社が、買手に事業のための資産を売却し、売却代金を取得します。その売却代金を受け取った売手会社が、税金を支払うことになります。資産を売却したことによる譲渡益に対して法人税などが課されます。譲渡益は、売却代金から譲り渡す事業資産と負債の差額を差し引いて計算します。この譲渡益とそれ以外の会社の利益を加味して法人税の所得金額を計算します。そして、この所得金額に税率を掛けて税額を算出します。税率は、法人税のほか、地方法人税、法人住民税、事業税などがあることと、所得金額等によりまちまちであるため、一概にはいえませんが、財務省がいう、29.74%を参考にしてください。また、売却した資産のうち、消費税の非課税取引である土地などを除いた売却代金には、消費税がかかります。

詳しいことは税務の専門家である税理士にご相談ください。